行方不明になった社員への賃金の支払いについて

(1)事業場に保管しておく方法
賃金については、一般的には事業場において
支払うという慣行が成立しているとみられますから、
支払日を過ぎても労働者が事業場に受取に来るまでは
賃金不払にはならないものと思われます。


したがって、行方不明の労働者の賃金、
退職金についても、支払いの用意をして
労働者が受取に来るのを待つ
という方法もあります。

そのようにして、
2年が経過すれば賃金については
5年が経過すれば退職金については時効が成立します。


(2)賃金を講座振込みによって支払っている場合
もし、普段から賃金を本人名義の口座に振り込むという
いわゆる講座振込みの手続きによっている場合には、

その口座に振込めば、
振込んだ時点で賃金の支払いは完了したことになりますから、
まず、口座に振込むという方法があります。

その口座が差押えられるというおそれもありますが、
それは相手方の問題です。


(3)配偶者への支払
配偶者に支払うことができるかについては、
通常の状態であれば、配偶者を使者とみなして
有効な支払いと見ることも可能ですが、

本人が行方不明の場合には使者とみなすことは困難と思われ、
仮に配偶者に支払っても有効な賃金の
支払いとみられないおそれがあります。

配偶者の状態によっては気の毒な結果に
なりますが法的には致し方ありません。


(4)供託する方法
賃金、退職金を供託をする方法が考えられます。
供託をすれば、支払ったのと同じ効果を生じ、
以後の支払義務を免れることができます。

これにより、いつまでも支払い義務を残したまま
留保しておくことには伴う煩わしさから
免れることができます。


(5)労働者の債権者が、賃金債権の譲渡を受けたとして
   会社に支払いを請求してきても、

賃金・退職金は労働基準法第24条により本人に
直接支払わなければなりませんから、

会社はそのような請求に応ずる必要はありません。
債権者が、差押さえ手続きを取ってきた場合には
(民事訴訟法第152条により、賃金・退職金の
差押さえ額は原則としてその額の4分の1まで)
その差押さえは有効です。
なお、懲戒解雇をした場合には、通常、退職金の問題は生じません。

また、行方不明ということになりますと、
この社員が退職したのかどうかを確認しなければなりません。

退職の意思表示をすることなく行方不明になった事をもって
退職したものと取り扱うことはできないでしょう。
退職として取り扱うためには、
就業規則の定めに基づく必要があります。


(就業規則例)
「私事都合で1ケ月連絡もなく
 欠勤した場合には退職したものとする。」