しかし、2004年に入ると状況が一変した。
キャノン本社が「現場にトヨタ生産方式を導入する」と宣言し、
この日を境にベテラン正社員が生産ラインから姿を消した。
「彼らはみんな偉くなって、カイゼン何とかと言う部署に上がっていった」(大野)。
現場に残った正社員は管理業務に専念し、
実作業には一切タッチしなくなった。
2005年5月、キャノンは大野たちとの
契約を請負から派遣に切り替えた。
2004年3月施行された改正労働者派遣法で、
製造現場への人材派遣が可能になったからだ。
正社員が請負社員に指示するのは違法だが、
派遣社員なら問題ない。
但し、はこの場合は1年以上雇用し続けると本人の希望を聞いて
正社員に登用しなくてはならない(現在は3年)。
「ひょっとしたら正社員になれるのか」大野らが
淡い期待を抱き始めた2006年5月、キャノンは契約を
再び請負に戻した。
そして10月、新聞報道などで偽装請負が社会問題化すると、
今度は大野たちがいる職場から正社員を全員引き上げた。
キャノンの正社員に代わって、現場を管理するようになったのは
アイラインの正社員。業務請負本来の姿になったわけだ。
丸投げですむ単純作業なら、これで問題はないはずだが、
高い技能が要求されるレンズ研磨はそうはいかない。
