抜け殻正社員、派遣、請負依存経営のツケ・・・第5回


2007年1月、キャノンはステッパー市場でのシェア回復を

狙った新製品を投入した。

「新しい工作機械は、研磨作業を始める前の工具の調整に

7時間もかかる代物だった。」(大野)

さすがの大野たちにも、正社員に聞きたいことがある。

だが、正社員に直接聞けば偽装請負。

そこで、今は苦し紛れにこんな方法を取っている。

キャノンの正社員が管理約のアイラインの正社員を呼びつける。

大野たちも一緒についていくが「お前はあっちを向いていろ」と

命じられ、キャノンの正社員がアイラインの正社員に

向かって指示を出す。

「俺には何のことだかさっぱりだったが、お前は分かったんだよな」

キャノンの正社員が立ち去ると、アイラインの正社員は

大野らにこう念を押す。

これが偽造請負を撲滅した現場の実態である。

こうした裏技を使わず、正規の手続きをとると

「現場なら10分で済む手直しに3日かかる」と大野は言う。

「1日12時間、四六時中、顔を合わせて働いているのに

一言も口を利かない。一緒に飲みに行くのもダメ。

おかしいと思いませんか」

大野の同僚、佐藤誠次(33歳)はこう問いかける。

偽装請負への過剰反応が冷え切った人間関係を生んでいるのだ。