セクハラとなる一線

セクシュアルハラスメントは明らかに

刑法にふれるような場合を別にして、

どこまでがセーフかアウトか、

違法か適法かを簡単に判定することは出来ません。

しかし環境型のセクハラについてはすでに述べてきたように、

お互いのコミュニケーションギャップを取り払うことで

解消できる面があります。

社員同士が胸襟をひらいて話し合う機会を作ったり、

一人一人が様々な機会を通じて自分の言動について

改めて考えてみるだけでも職場の雰囲気はずいぶん変わります。

セクハラの法的責任

セクシュアル・ハラスメントは個人の責任だけでなく

企業の責任にもかかわります。

企業は労働者に対して働きやすい労働環境を

提供する義務があり、業務に関連してセクハラが発生したにもかかわらず、

それを放置したまま改善しなければ

民法715条の使用者責任を問われます。

裁判所がどのような要素を違法なものにしているかをみると

行為の具体的態様、当事者相互の関係、取られた対応などになりますが、

業務の関連性については、

次のようなものが判断基準になると考えられます。

○時間(就業時間内かどうか)

○場所(就業場所かどうか)

○関係(当事者間の関係)

○内容(性的言動の内容)

○態様(性的言動の態様)

「親しさ」と「セクハラ」の違い

セクシュアル・ハラスメントとは、「相手の意思に反する行為」

「相手が望まない行為」です。

したがって同じ行為でも、

相手の同意があればよいということになります。

親愛の表現で肩をさするという同じ行為をしたのに、

Aさんの場合とBさんの場合感じ方が違うと言うのは、

関係がAさんとBさんで異なるからです。

相互に信頼関係が構築されていれば、

それが親しさや励ましにもなりますが、

人間関係がギクシャクしたままそういう行為をすれば、

親しさのつもりでやっても、嫌がられるのは当然です。

セクシュアル・ハラスメントとは

セクシュアル・ハラスメントとはどういうものか、

「職場での相手の意に反する性的言動」で、

これを大別けすれば次の二つに分けることが出来ます。

1・対価型セクハラ
職務上の地位や権限を利用して不利益や利益を与える性的言動。

相手に対しての措置が、性的言動を受入れたり拒絶したりすることと

対価・対償関係にあるもの


2・環境型セクハラ
労働環境や就業環境に著しく悪い影響を与える性的言動。

職務の遂行や能力の発揮などに支障が出たりするようなもの

ここでいう「性的な言動」とは、次のような事とが該当します。

(性的な行動)
・性的な関係を強要すること

・必要なく身体に触ること

・猥褻な図画を配布すること


(性的な発言)
・性的な事実関係を尋ねること

・性的な内容の情報を意図的に流布すること

対価型セクハラと環境型セクハラの具体例が次のように示されています。


1・対価型セクハラの例

・性的な関係を要求して拒否された為、女性労働者を解雇した。

・腰や胸などを触って抵抗された為、女性労働者を配置転換した。

・性的な事柄の発言をして抗議された為、女性労働者を降格した。


2・環境型セクハラの例

・腰や胸などを度々触るので、女性労働者が苦痛に感じて出勤できない。

・取引先に性的な内容の情報を流布したため、
 女性労働者が取引先に行くことができない。

・事務所内にヌードポスターを掲示しているため、
 女性労働者が業務に専念できない。

「自分の会社は大丈夫」は本当か?

「セクハラのトラブルは今まで上がってきていない。

だから対策なんて要らない」と言う人がいます。

しかし訴えが無いと言う事は、

セクハラがないということではありません。

セクハラは業界の慣行や企業風土、

もっと根本的に言えば日本の歴史や文化ともかかわります。

そうした中でセクハラがあったときに

女性の誰もが明確に「ノー」と拒絶できるかと言えば、

そうではありません。

女性にとっては、

どこに相談したらよいのかわからないと言う問題もあります。

総務なのか人事なのか、相談窓口がわからない

そもそも相談に行くことは言いつけに行くようで

嫌だと言う気持ちもあるようです。

セクハラ問題は、セクハラと言う言葉が日常語となって

一人歩きをしてしまったために、

実態がなかなか理解されていない面があります。

何がセクハラになるのか、

どんなときに女性は性的不快感を持つのかなどについての認識を深め、

どうすればセクハラを防ぐことが出来るのかを

1人1人が真剣に考える必要があります。

職場のマナーとセクハラ

セクハラの問題は、わかりやすく例えると「嫌煙権」に似ています。

20年前には、タバコを吸う時に隣の人に

「タバコを吸ってもよろしいですか」と聞く人はいませんでした。

しかし嫌煙権を争う裁判なども起って、

タバコを吸う場所や吸い方についてのマナーがだんだん

出来てきています。

社会的にも喫煙者に対する規制は厳しくなり、

公共のスペースでの喫煙は非常に限られてきました。

タバコを吸うことによって他人の権利や自由を侵害する、

つまり周りの人の健康を害しないようにする配慮が出てきました。

これはわずか20年の間のことであり、とても象徴的です。

タバコは副流煙等によって周りの人の健康を侵害するわけですが、

セクハラも質は違うものの、憲法に保障された人格権に

根ざすものを侵害するおそれがあります。

性的な嗜好はきわめて個人的なものであって、

体を触られるとか、卑猥な話しを聞かされるとかは、

場合によっては相手の人格を否定し、傷つける結果にもなります。

それは基本的には人格にかかわることであり、

あまり踏み込むことではありません。

そうすると当然、タバコと同じように、

よろしいですかと聞くマナー、

相手がそれを嫌がっていないかをさりげなく問うマナーが求められます。

例えこれぐらいは許されるだろうと思っていても、

ある人にとってそれが非常に不快だと言うなら、

法律で処理する以前に職場のマナーやルールとして

控えるようにすべきです。

セクハラ防止対策の重要性

1989年に「流行語大賞」に「セクハラ」という

言葉が選定されて以来、日常でもよく使われるようになっていますが、

この問題を真剣に考えている人は残念ながらまだまだ例外的です。

しかし実際に紛争が発生した場合には、

企業も個人も相当のダメージを受けます。

企業にとってのセクハラ対策の必要性を改めて整理すれば、

次の3点が大きなものとしてあがられます。

1.訴訟や交渉による損失

2.企業イメージの低下

3.社員のモラールのダウン

まずは、セクハラ被害を受けた人が自社にいれば、

それを救済すべきことは言うまでもありません。

これは被害者の人権救済という視点ですが、

同じように重要なことは紛争が発生することによって企業にも

大きなマイナスが発生するということです。

これは、いわゆるリスクマネジメントや危機管理という視点です。

この点をよく理解することが大切です。

セクハラが起きている会社と言うことになれば、

社員同士に不信感が生じて業務の円滑な遂行に支障が出たり、

そこで働く社員の指揮にも影響します。労働意欲が減退して

生産性が低下することにもなりかねません。

個人としてみた場合、法的責任を除いても

次のような大きな問題があります。セクハラ問題では多くの場合、

双方が全面的に争います。

セクハラはしばしば第三者がいない場所で行なわれることが

多く女性の立証も大変なため、法的責任の追及までいかなくても、

スキャンダルやトラブルになりやすく、

その為に男性が地位を失ったり、

会社を辞めたりといいうケースがしばしばあります。

いったん紛争が起ったら、もはやことの真意ではなくなることが

多いのです。

こうした現実があることについてもよく理解しておく必要があります。

何故今セクハラの防止が重要なのか?

「セクハラ」への取り組みが求められています。

今何故、本腰をあげなければならないのか。

それにはいくつかの理由があります。

まず法律面からいえば、99年4月1日から

改正男女雇用機会均等法が施行されました。

このなかで企業は、女性労働者が性的な言動によって不利益を受けたり、

就業環境が害されないように雇用管理上の配慮義務を

負うことになりました。

これは、日本の法律で始めてセクハラが規定されたものです。

セクハラの法制化の大きな背景としては、

やはり紛争が増加していることがあります。

多くの企業や男性が、セクシュアル・ハラスメントで

損害賠償を請求されたり、会社での地位を失ったりしています。